三十二、「ゴーパーラ龍王の住む岩窟へ」

三蔵法師は、それらの仏の遺品に対して礼拝することができて、その哀敬の限りを尽くすことができたのでした。
そして、三蔵法師はその寺に金銭五十、銀銭一千、絹の旗四口、錦二反、法服二組を奉納し、多くの散華(さんげ)を執り行って退出したのでした。

また、三蔵法師はこの地で、ナガラハーラ城の西南に二十余里に、ゴーパーラ龍王の棲む岩窟があり、むかし如来がそこで龍を降伏(ごうぷく)し、今もその中に御姿を留めているという話を聞いたのでした。

三蔵法師はそこへ行って礼拝したいと思ったのですが、その道は聞いたところによると、道は荒れ果てて険しく、さらには盗賊が多く潜んでいて、ここ二、三年は御姿も見られずにあったので、訪れる人もまれであるということでした。

そこで三蔵法師は、その岩窟へ赴いて礼拝したいと思ったときに、カピシー国から送ってきた使人は、早く故国に帰りたがって、この地に滞在することを嫌がり、三蔵法師に行くことを勧めなかったのでした。

そこで三蔵法師は、
「如来の真影(しんえい)は永遠に逢いがたいものです。どうしても私はそこへ行って礼拝したいとおもいます。貴方たちはどうかゆっくり先に帰ってください。私はしばらくそこへ行ってきたいとおもいます」
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉
と言って、ひとり燈光城にもどったのでした。

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