三十三、「岩窟への途中で賊に遭遇」

そしてある伽藍に行った三蔵法師は、窟(いわや)への道を問うて、道案内を求めましたが、誰一人としていっしょに行こうとする者はいませんでした。

まもなくすると、一人の少年が、
「この寺の荘園はあの窟の近いところにあります。寺荘(じしよう)までなら私がご案内いたしましょう」
と言ってくれたのでした。
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

そこで三蔵法師は、その少年と一緒に寺荘まで行って一泊したのでした。
そして、そこで窟のありかを知っている一老人を得て、二人で出発したのでした。

数里ばかり行くと、五人の賊が刀を抜いて現われたのでした。

三蔵法師は、帽をとって法服を示すと、賊は、
「法師はどこへ行こうと思うのか」
と尋ねた。

法師が、
「仏影(ぶつえい)を礼拝(らいはい)したいと思うのです」
と答えると、

賊は、
「師はここに賊が出るということを聞かなかったのか」
といった。

そこで法師が、
「賊は人間です。いま私は仏を礼拝しようとしているのです。猛獣が町に満ちても私は恐れません。まして貴方たちは人間ではないですか」
と答えると、賊もついに発心して、いっしょに礼拝することになった。
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

まもなく窟に到着したのでした。

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