五十、「三蔵法師、村人に助けられる」

その涸池には茨やカズラが一面に生い茂っていてのでした。
三蔵法師についていた沙弥(しゃみ)(出家して十戒を守り、具足(ぐそく)戒を受けるまでの男子)は、まばらであった茂みの間から、池の南岸に水溜りがあるのを発見したのでした。
そこにはちょうど人一人が通れるくらいの隙間が開いていて、沙弥は密かに三蔵法師へ、

「師よ。ここから一緒に脱出しましょう」
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

とささやき、二人はそうして脱出し、一目散に涸池の東南の方へと二、三里ばかり全力で疾走し、俗から遁れたのでした。
間もなく、三蔵法師は、一人のバラモンが土地を耕しているところに出くわして、盗賊に襲われたことを話したのでした。
すると、彼は大変驚いて、すかさず牛を解いて法師に与え、村に向かって法螺貝を吹き太鼓を鳴らし、たちまち八十余人の仲間を集めたのでした。

彼ら村人は各々武器を持って、賊の出たところに急行し、賊は村人たちを見て林の中へと逃げて行ったのでした。

三蔵法師は、漸く池に着いて人びとの縛(いましめ)を解いたのでした。
そして、また、人びとが施した衣料を分け与えて、皆一緒にその村に泊まったのでした。
人びとは不運に哀しみ鳴いているのに三蔵法師は笑っていたのでした。

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