五十三、「村人と三蔵法師」

町の有力者(豪傑)三百余人は、

「チーナ(シナ)国の僧がきました。彼はこの町の近くで賊にあい、全ての衣服をとられてしまいました。諸君、どうかいまこそ、善根をまくべきときがきたと悟ってください」
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

ということを聞くとおのおの模様入りの木綿一反づつと飲食物をもって、恭しく三蔵法師の前にうず高く積み上げ、三蔵法師に礼拝して見舞いの言葉を送ったのでした。
そこで三蔵法師は、人びとのために祈願し、また、それと同時に因果応報についての説教をし、集まった人びと皆に道心を起こさせ、邪教を捨てて、仏法の正道に付き従うことを進めたのでした。
すると人びとはお互いに笑いながら話し合い、小躍りし嬉々として帰っていったのでした。
こんなことはこれまでなかったと、この有様を見てバラモンは感心するのであった。

三蔵法師は集まっていた人々に木綿を数反づつに分けて与えたのですが、まだ残っていたので、木綿布五十反をバラモンに送ったのでした。

そして三蔵法師は一ヶ月余り滞在し、バラモンから『経百論(きょうひゃくろん)』『広百論(こうひゃくろん)』を学んだのでした。
そのバラモンは龍猛(ナーガルジュナ)の弟子で、親しく先生として三蔵法師を指導し、そしてそのバラモンの説明は非常に明瞭、且つ清浄なのでした。

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