三十七、「ナーランダー寺 八」

当時、阿難(アーナンダ)もこの学地にいたのでした。
そこで、迦葉(カーシャパ)は阿難に向かって、

「そなたはまだ完全な聖者ではない。だからここへ来て諸衆を汚してはならない」
といった。
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

阿難は大いに恥じ入り、一夜勤行(ごんぎょう)して三界の結(けち)を断って阿羅漢となり、帰ってきて門をたたいたのでした。
そこで迦葉(カーシャパ)は、

「汝(なんじ)は三界の結を断ったか?」

と尋ねると、そのとおりであると答えたので、

「もし結(けち)が尽きたならば、門を開かなくとも意のままに入るであろう」

といった。

そこで、阿難は戸の隙間(すきま)から入って迦葉(カーシャパ)の足下に礼拝した。
迦葉は阿難(アーナンダ)の手をとって、

「私はそなたがもろもろの欠点を除き、聖者の域に達することを願って、ことさら汝を追い出した。そなたはよろしく私の真意を悟(さと)り恨(うら)みに思わないでください」

といった。

阿難は、

「もし貴方(あなた)に恨みをもったならば、どうして結が尽きたなどと申しましょう」

と答え、礼謝して座った。

その日はちょうど、初安居(あんご)の十五日目の日であった。
迦葉(カーシャパ)は阿難(アーナンダ)に向かい、

「釈尊はいつも人びとにそなたは多聞(たもん)第一で、もろもろの法をすべて知っているといわれた。どうか貴方(あなた)は座に上って、人びとのためにスートラ蔵を誦(ず)してください」

と語った。
すなわち一切経である。
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

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