四十二、「僧婆(ハンサ)に纏わる話」

昔、このハンサの伽藍は小乗教により、三浄肉(さんじょうにく)を食していたのでした。
あるとき、山内に肉が無くなり係りの僧は困ってしまったのでした。

たまたま群鴈(ぐんがん)が空を飛んでいるのを見て戯れに空を仰いで、

「今日は僧の食事の肉がない。菩薩よ、よろしくお察しください」といった。
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

そう言い終わるや否や、目の前を飛んでいた鴈(かり)がその声に応じて引き返し、翼を雲で切ってさっと身を投じて落ちてきたのでした。
その僧はこのさまを見てびっくりと驚き、そして、おののいて、この話をあまねく衆僧に告げたので、聴いた人びとはみな驚き、この鴈に涙を注がぬ者はいなかったのでした。

そして、

「その鴈(かり)は菩薩である。どうしてわれわれがこれを食べられようか。また釈尊は戒律を設けて漸次(ぜんじ)に教えられているのに、われわれは釈尊の最初の教えを究極の説となし、愚(ぐ)を守って改めず、このような殺生(せっしょう)をしてしまった。これからはわれわれも大乗に従い、もう三浄は食べないようにしようではないか」
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

といい、みんなで霊塔(れいとう)を建てて死んだ鴈(かり)を埋め、表記してその決意を示して、永くこの美談を伝えさせることにしたのでした。
この塔はそのようないわれのある塔なのでした。
三蔵法師はそれらの聖跡をあまねく巡礼したのでした。

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