四十三、「ナーランダー寺での出来事」

こうして三蔵法師は再びナーランダー寺へと戻り、いよいよ戒賢(かいけん)法師に『瑜伽論(ゆがろん)』の講義を請うたのでした。
三蔵法師と同じく朝貢する者は数千人の多さを数えたのでした。
開講後、しばらくすると、一人のバラモンがやって来て、場外で泣いたり笑ったりし始めたのでした。
どうしてそんなことをするのかと人をやって問うたところ、そのバラモンは、

「私は東インドの者です。むかしポータカラ山の観自在菩薩(かんじざいぼさつ)像の前で、私は王になりたいと願をかけたところ、菩薩は私のために身を現して叱責(しっせき)し、"そなたはこんな願をしてはならぬ。のち某年某日に、ナーランダー寺の戒賢法師が、チーナ国の僧のために『瑜伽論(ゆがろん)』を講義するであろう。そなたはまさにおもむいてその講義を聞け。その話を聞けばのちに仏をみることにができよう。王などになる必要はない"といわれたのです。ところがむかしのお言葉どおり、いまチーナ僧がきて正法蔵(しょうほうぞう)が講義されています。あまりの暗合に、思わずわれを忘れたのです」

と答えた。
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

戒賢法師はその話を聞いて彼にも講義を聞かせたのでした。
十五か月後に講義が終わると戒賢は人を遣わせてバラモンを連れ、戒日(かいにち)王のもとへと送らせたのでした。
王は奇特な尋部であるとして、彼に三邑(さんゆう)を封土(ほうど)を与えたのでした。

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