十七、「マラクタ国」

そこで三蔵法師は、『瑜伽(ゆが)』の重要な部分の一節をひいて質問したのですが、戒賢(かいけん)法師の解釈に優るものはいなかったのでした。

三蔵法師は、達羅毘荼(ドラヴイダ)国の国境から三千余里の所に、秣羅矩●「口篇に屯」(マラクタ)国(インド半島南端部、南インドの境)があるとの話を聞いたのでした。
この国は海岸沿いにあり、きわめて異宝が豊かであったとのことでした。
その城の東にアショカ王のストゥーパがあり、ここは昔、如来が法を説き、大きな奇蹟を行って無数の人びとを済度(さいど)された所なのでした。

国の南に海に接して秣刺耶(マラヤ)山があり、崖谷(がいこく)は急峻(きゅうしゅん)なのでした。
山中には、白檀香樹(びゃくだんこうじゅ)や栴檀●「人篇に爾」婆(チャンダネーヴァ)樹があって、その樹は白楊(はくよう)に似ていて冷涼で、いつも多くの蛇の棲家となっているのでした。
冬になって冬眠のときは別の樹に移るのでした。

また、カルプーラ(羯布羅、樟脳)香樹があって、幹や枝は末に似ているのですが、葉や花果は異なっているのでした。
生のときには香はありませんが、乾(かわ)かしてから折ってみると中に香があり、その形は雲母の様で、色は氷雪の様であったのでした。
これがいわゆる龍脳香(りゅうのうこう)なのでした。

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