十八、「シンハラ国に伝わる話 一」

聞くところによると東北方の海岸に一つの町があり、ここから東南へ三千余里でシンハラ国(唐に執師子という。現名はスリランカ。この国は、インドの国境内の国ではない)に着くのでした。
国の周囲は七千余里、都城は周囲、四十余里で、人口も戸数も多く穀物も盛んに取れるのですが、人びとは肌が黒く小さく伊パン的に粗暴なのでした。

この国は、宝石の国なのであって、多くの珍奇な宝石があるのでした。

ある時、南インドのある娘が、隣の国に嫁入りしようとしたときのことだったそうです。
ところが、途中でライオンの王にあい、見送人はみな驚いて逃げて帰ってしまったのでした。
そこで、娘は唯一人、車中に残っていると、やがてラいオンはやってきて、娘を背負って去り、遠く深山に入って彼女のために果物をとったり、鳥を掴まえたりして、食事をさせたのでした。

こうして久しい歳月が流れ、男児と女児が育て上げられたのでした。
姿形は人に似てはいたのですが、性質は極めて凶暴なのでした。

男児は成長すると、母に、

「私はいったい何の類(るい)なのですか。父が獣で母が人間……」
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

と尋ねたのでした。

そこで母親は、隣国へ嫁入り途中で、ライオンに奪われた昔の有様を息子に語ったのでした。

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