十九、「シンハラ国に伝わる話 二」

そうすると男の子は、

「人間と畜生はまったく異なったものであるのに、どうして母上はライオンを捨てないで世話をしているのですか」

という。

母は、

「妾(わたし)とても帰りたい心がないわけではない。ただどうしても免(まぬが)れる術(すべ)がないのです」
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

その後に、男の子は密かに父の後を追って山谷を歩き回り、その経路を知るようになったのでした。

ある日、彼は、父が遠くへ行ったのを見はからい、母と妹を背負ったり連れたりして、人里に出て、母の本国に戻って祖父を訪れたのでしたが、既に一門は死に絶えていたのでした。
そこで、かれらは そこで寄宿していたのでした。

その一方、ライオンは返ってみると妻子がいないので、憤怒(ふんぬ)して山を下り、人里に咆哮(ほうこう)し、道行く人びとに襲いかかって多くの被害を出したのでした。
人びとは困ってこのことを王に奏上(そうじょう)したのでした。

そこで王は軍を率(ひき)いて、勇猛の士を募(つの)ってライオンを囲み射殺しようとしたのでしたが、これをみたライオンは、咆哮(ほうこう)凄まじく師子吼(ししく)したので、人馬は傾き落ちて、敢えてライオンに近づこうとする者がいないのでした。
毎日毎日、このようなことが繰り返され、どうしてもライオンを倒せることができないのでした。

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