二、「ジャングルに纏わる言い伝え 一」

相伝えて言うには、昔、まだ釈尊がこの世に表れる以前に、一人の牛飼いがいたのでした。
その牛飼いは数百頭の牛を放牧し、牛を折ってジャングルへ入ってた行く日々を過ごしていました。

するとある一頭の牛がいつも群れを離れて一頭でどこかへ行ってしまい、いつもその所在が分からないのでした。
日が暮れてその牛飼いが牛を率いて帰ろうとすると、いつの間にかそのはぐれた牛は戻ってきて、群れの中にいたのでした。
そして、その牛はキラキラと輝いていて、啼(な)き声もいつもと違っていたのでした。
ほかの牛はその威容に怖気づいて、その牛に近づこうとはせずに、また、その牛の前に出る牛はいなかったのでした。
このようなことが毎日続いたので、ある日、とうとう牛飼いはそのわけを怪しんで、密かにその牛を監視していたのでした。

その牛はしばらくすると何処かへ去ってゆくのでした。
牛飼いがその牛を追跡して行くと、遂にその牛は一つの大きな岩石の孔(あな)に入り込んだのでした。
牛飼いもその後に続いてその孔に入って行くと、四、五里ばかり行くと豁然(かつぜん)と明るくなり、野も林も燦燦と陽光を浴びて、辺りには見たこともない花や果物があふれるように並んでいたのでした。

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