二十、「シンハラ国に伝わる話 三」

そこで王は、賞金をかかげて、もしもライオンを倒すものがいれば、その者に、まさに億金(おくきん)を賜(たま)うであろう、と布告(ふこく)したのでした。

これを聞いた男の子は母にむかって、

「私たちはいまや飢えと寒さで我慢できません。私は王の募集に応じようと思いますが、どうでしょう」

といった。

ところが母は、

「いや、そなたは行ってはなりません。彼は獣であるが、そなたの父である。もしそなたが父を殺せば、どうしてそなたは人間といえましょう」

と諌(いさ)めた。

しかしその子は、

「しかしもし私が行かねば彼は決して去らないでしょう。あるいは私たちを尋ね求めて、この村にやってくるでしょう。そのことがいったん王に知られてしまえば、かえって私たちは殺されます。どうか止(と)めないでください。なぜならラいオンが乱暴をしているのは貴女(あなた)や私のためです。どうしてわれわれのために多くの他人を悩ましたままでいられましょう。いろいろ考えてみると、どうしても募集に応じたほうがいいと思います」
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

といって、彼は行ってしまったのでした。

ライオンは彼の姿を見るとおとなしくなり、すっかり喜んで乱暴する雰囲気は微塵もないのでした。

このページの先頭へ