三十七、「三蔵法師の夢 二」

法師はさされたほうを望見すると、紅蓮(ぐれん)の火が村々をおおって、あたりはすべて灰燼(かいじん)になっている。

かの金人は、

「そなたは早くここから帰国なさい。いまから十年後にはハルシャヴァルダナ王も崩御(ほうぎょ)し、インドは内乱が起こり、悪人(あくにん)どもの相(あい)争うところとなるであろう。そなたはこのことを忘れてはならぬ」

といったかと思うと、その姿はみえなくなった。
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

三蔵法師は夢から覚めると、その夢がつくづく不思議に思い、ジャヤセーナ論師にその夢の話をしてみたところ、

「この三界は変動はつねならぬもの。あるいは将来その夢のようになるかもしれない。すでにそのような菩薩のお告(つ)げがあったのだから、そなたは自分のよいように善処しなさい」

との返事であった。
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

こうして大師(三蔵法師)の行いはいつも菩薩の加護があったことが知られるのでした。
三蔵法師が正にインドに赴こうとしたときには、菩薩は、このことを戒賢(かいけん)に告げたのでした。
しかも三蔵法師が長くマガダ国に滞在し、何時までも帰らずにいると、無常を示して帰ることを勧めているのでした。

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