四、「ジャングルに纏わる話 三」

そこで咽(むせ)た牛飼いは、とうとうその果物を飲み込んでしまったのでした。
すると身体が途轍もなく大きくなり、その岩石の孔から頭だけ出せるのみで、とうとうその孔から出られなくなってしまったのでした。
それ故に彼は最早帰ることが不可能になったのです。

その後、家人が探し回り、尋ねてきて、彼の身体がすっかり変わってしまったのを見て、大いに驚いて恐れおののいたのでした。
しかし、彼はまだよく話ができ、こんな事態に陥ってしまった顛末を話して聞かせたのでした。
そこで家人は、家に帰って、多くの人夫(にんぷ)を集めて、牛飼いを助けようと試みたのでした。
しかし、どうしても彼を動かすことができなかったのでした。

やがて、国王もこの話を聞いて、国王自らそこにやって来て、その有様を見、後々の患いなることを心配して、国王は命令をして、この石を掘り取ろうとしたのですが、全く動かすことができなかったのでした。
それから多くの年月が経ち、ついに牛飼いは石に転じたのでした。
その医師は今も人の顔をしているとのことです。

後世の王は、牛飼いが仙果(せんか)のために石に変えられてしまったことを聞き、家来に、

「彼は薬によって身体が変わってしまったという。すなわちこの身は薬である。見れば石にすぎないが、この体はいまや神霊である。人を遣わして鎚(つち)と錐(きり)で少し削(けず)り取って持ってこさせよ」

と命じた。

そこで家来は王命により、石工(いしく)と行って懸命に石を削り取ろうとしたが、十日あまりやっても一片(いっぺん)も取れなかったという。
その石はいまもそこに残っていた。
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

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