四十五、「順世派のある外道 二」

ナーランダー寺にやって来た順世派のある外道は、四十条の疑義を寺門にかけて、

「もしこの一条でもこの議論を破る人がいれば、私は首を斬(き)って謝(あやま)りましょう」
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

と豪語していたのでした。
しかし、そのまま何事も起こることなく、数日が経ち、此の外道の疑義に応ずるものはナーランダー寺には一人もいなかったのでした。
そこで三蔵法師は、房内の掃除人にいってその疑義文を取り外して打ち壊せて、足でぐちゃぐちゃに踏ませたのでした。

これをみたバラモンは大いに怒ったのでした。

「お前はいったい何者か」
「私はマハーヤーナデーヴァ(摩訶耶那提婆、乗天の義、インドにおける三蔵法師の名)の使用人だ」
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

かのバラモンも、もちろん三蔵法師の令名(れいめい)は知っていたので恥じ入り、その言葉を聞いて何も語らなかったのでした。
そこで、三蔵法師は、バラモンを呼んで寺内に入れて、正法蔵(しょうぼうぞう)の前に連れて行き、そして、同時に諸徳に命じて立会人(たちあいにん)として、彼と議論したのでした。
三蔵法師のその論は根本に立脚していて外道諸派の論拠を尽くしていたのでした。

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