五十、「三蔵法師と奴僕のバラモン 一」

三蔵法師がそのように答えたので、バラモンは大いに喜んで三蔵法師を敬服し、房(ぼう)に連れられて行ったのでした。
そして、また、これを訊いて感心しないものはいなかったのでした。

さて、まもなく三蔵法師はウダ国へ行こうと考えて、例の小乗で作られた『破(は)大乗義』七百頌(じゅ)を持っている人を訪ねたのでした。
三蔵法師はこれを読んでみると、数か所疑問のところがあったのでした。
そこで調伏(ちょうぶく)したバラモンに、

「そなたはいままでに、この『破(は)大乗義』の講義を聞いたことがあるか」

と聞いてみると、かつて五回聞いたことがあるという。

そこで法師はバラモンに、それを講義させようと思った。

ところがバラモンは、

「私はいま奴僕(ぬぼく)になっているのです。どうして主人のために講義などできましょう」

と取り合わない。

「この『破(は)大乗義』は他宗の本で、私がまだみたこともない本である。そなたは何も気にせず、ただ講釈してくれればいい」
「そうですか。では夜中に来てください。他の人に奴僕(ぬぼく)の私から法を学ぶことを知られ、法師の名誉を汚してはいけませんから……」
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

そこで夜中になると三蔵法師は人払いをして『破大乗義』を一回講義させ、つぶさにその論旨を知ることができたのでした。

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