五十一、「三蔵法師と奴僕のバラモン 二」

奴僕のバラモンに『破大乗義』の講義を受けて、その論のいうところがよく理解できたので、三蔵法師は、『破大乗義』の誤った点をついて、大乗の理論よりこれを改め正して、『破悪見論(はあくけんろん)』千六百頌(じゅ)を作り上げたのでした。
それを三蔵法師はその他の人びとに見せたのですが、

「この論で問いつめてゆけば、どんな論敵でもやっつけることができよう」
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

と、その見事に構築三蔵法師の論にみな感嘆の声を上げて讃頌しないものはいなかったのでした。

その『破悪見論』の内容は別本に書かれている通りです。

三蔵法師はバラモンに向かって、

「そなたは議論に負けて奴僕(ぬぼく)となったので、もはや辱(はずかし)めは十分うけたわけである。いま貴方(あなた)を自由にしてあげよう。すきなところへ行きなさい」
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

と、三蔵法師が言ったので、奴僕のバラモンは歓喜(かんぎ)して、三蔵法師の下を辞去し、東インドのカーマルーパ国にゆき、そのクマーラ王に向かって、三蔵法師のその徳の高い事を語ったのでした。
王は、それを聞いて大いに悦(よろこ)び、使いを出して、三蔵法師に来遊を要請してきたのでした。

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