三十四、玄奘三蔵の業績 一

『慈恩伝』によれば、玄奘三蔵の臨終に当たり、玄奘三蔵は弟子の嘉尚に命じて、つぶさに翻訳した記録させたところ、総計七十四部一千百三十八巻に及んだという事です。
鳩摩羅什が73部数、384巻、真締が49部数、142巻、不空が111部数、143巻、法護が175部数、354巻、義淨が469部数、1222巻の先達の翻訳に比べると玄奘三蔵は469部数、1338巻と群を抜いている事が明瞭です。

玄奘三蔵の翻訳で部数が少ないのは、『瑜迦師地論(ゆがしじろん)』百巻、『大般若経(だいはんにゃきょう)』六百巻のように巻数の多いものが多かったからです。

かつてこのことを仔細に研究した松本文三郎博士は、『開元録』に『一切蔵経(いっさいぞうきょう)』が千二十四部、五千四十八巻とある事から、玄奘三蔵が独力で全蔵の四分の一強を訳したことを明らかにしました。
また、玄奘三蔵が翻訳に従事したのは、貞観(じょうかん)十九年(六四五)から竜朔(りゅうさく)三年(六六三)十月ごろまでである事から、この十七年六か月に千三百八巻の経典を翻訳するには、毎年平均約七十五巻、一か月に六巻と四分の一、五日間に一巻づつ訳したと論ぜられると言っています(松本文三郎「玄奘の研究」〈東洋文化の研究〉)。

この驚くべき数字は、実に玄奘三蔵の強固な意志と倦まずたゆまぬ努力をよく物語っています。

このページの先頭へ