十三、「ハルシャヴァルダナ王との会見」 四

ハルシャヴァルダナ王は、

「そなたたちの上座、デーヴァセーナ(提婆犀那 天軍の意)は、いつも私の解釈を全て俊英(しゅんえい)にまさり、学はもろもろの哲人をかね、はじめて異見を唱えてつねに大乗を論破するといっていた。ところが支那の大徳が来ると聞いて、ヴァイシャーリーにおもむいて聖跡(せいせき)を巡礼したいといって逃げてしまった。そこで私はそなたたちの無能を知っているのだ」
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

いったのでした。

大王には妹があって、彼女は聡明(そうめい)で正量部に精通していたのでした。
王の後を座って、三蔵法師が大乗の宗義が広大で小乗の教えが浅く狭い事を述べるのを聞き、非常に喜んで三蔵法師の学が深い事を賞賛(しょうさん)してやまなかったのでした。

そこで王は、

「師の論は大いによろしい。私をはじめこの衆僧もみな信伏(しんぷく)しました。ただ私は他の国の小乗外道(げどう)の輩(やから)が、なお愚迷(ぐめい)を守っていることが心配です。どうかお願いですから曲女城(きょくじょじょう)(カンヤークブジャ)で師のために一つの会を開き、全インドの沙門・バラモン・外道に命じて集まらせ、そこで大乗微妙の理を示して、大乗を毀謗(きぼう)する心を絶(た)ち、師の盛徳の高さを示して、彼らの慢心を打ち砕いてやってください」
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

といって、その日のうちに勅を発し、諸国およびもろもろの論師に曲女城(きょくじょじょう)に集まって、支那国の法師の論ずるのをみよと通知をしたのでした。

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