十六、「王の施与(せよ)」

王は内外の全ての人びとに同時に食事を用意して、食後、仏に金槃(きんぱん)を一、金椀(きんわん)七、金の澡缶(そうかん)一、金の錫杖(しゃくじょう)一、金銭三千、上質の氈衣(せんい)三千を施したのでした。
また、法師やその他の諸僧へも、おのおの施しをおこなったのでした。

施与(せよ)が終わると王は別に宝牀(ほうしょう)を設けて、三蔵法師に座らせて論主とし、大乗を称揚し、『制悪見論』を作った意を書かせたのでした。
そして、ナーランダー寺の沙門明賢法師(しゃもんみょうけんほうし)にめいじて、全てを読み聞かせ、別にもう一本を筆写(ひっしゃ)させて、会場の門外に掲(かか)げ、全ての人びとに示したのでした。

そして、三蔵法師は、

「もしそのあいだに、一字といえども理のないものがあり、能(よ)く論破する者があれば、私は首を断(た)ってお詫びしよう」
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

といったのでした。

このようにして晩になっても誰一人異論をはさむ者がゐなかったのでした。
ハルシャヴァルダナ王はこれを大いに喜び、会をやめて行宮(あんぐ)に帰り、諸王諸僧もおのおのの宿に帰り、ついで、三蔵法師もクマーラ王とともに自分の宿に帰ったのでした。

このページの先頭へ