十八、「三蔵法師、大衆の間をねり歩く」

この命令により、邪悪の徒は姿をひそめ、会期の十八日間を過ぎたのでしたが、誰一人として論を発する者がいなかったのでした。

まさにこの会を散会しようとする日の夕方、三蔵法師はかさねて大乗を称揚して釈尊の功徳(くどく)を讃(たた)え、多くの人びとを邪道から正道に導き、小乗を捨てさせて大乗につかしめたのでした。
ハルシャヴァルダナ王はますます崇敬(すうけい)の念を加えて、さらに三蔵法師に、金銭一万、銀銭三万、上等の毛織の衣服一百着を施(ほどこ)し、十八国の王もおのおの珍宝を施したのですが、三蔵法師はいづれも受け取ることはなかったのでした。

王は家来に命じて、一頭の大象を飾り、幢(はた)を立てて三蔵法師を乗らせ、貴臣に陪(はべ)らせて大衆を巡って立論に屈しなかったことを告げようとしたのでした。
インドでは論に勝った者は、いつもこのようにするのでした。
三蔵法師は勧められたのでしたが、譲(ゆず)って行かなかったのでした。

そこで王は、

「古来の法であるからやめるわけにはゆかぬ」
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

といって、三蔵法師の袈裟をもって大衆の間を遍(あまね)く巡ったのでした。

「支那の法師は、大乗の義を立てて、もろもろの異見を破った。十八日間、あえて異論を唱(とな)える者もなく、すべての人はあまねくこのことを知らねばならぬ」
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

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