三十一、「タクシャシラー国、カシュミーラ国、信度(しんどう)大河(インダス河)」

三蔵法師は人々の後ろを進んだので、時に山賊に出会ったのでしたが、遂に害は受けないで済んだのでした。

このようにして二十日余りの旅の後、タクシャシラー国に着き、再び月光王(げっこうおう)が千頭を捨てたところを礼拝したのでした。
この国の東北五十ヨージャにカシュミーラ国があり、その王は使いを遣わせて三蔵法師をお迎えしたいといってきたのですが、三蔵法師は、象によって輜重(しちょう)を運んでいるので、行けなかったのでした。
この国には七日間滞在しました。

また西北に行くこと、三日、信度(しんどう)大河(インダス河)に着いたのでした。
河は、広さ、五、六里であったのでした。教蔵と同行の人びとはともに船に乗って渡り、三蔵法師は象に乗って渡渉したのでした。
そのとき、一人の男に船中の経典やインドの諸々の異花の種子ほを看視させたのでした。
ところが、その船が中流にさしかかると、突然風波が巻き起こり、船を揺り動かして、時々沈没しそうになったのでした。
見張りの者は恐れをなして水中へ落ちてしまったのでした。
人びとはともに彼を救い出すことができたのでしたが、遂に五十巻の経典と花果の種子は失われてしまったのでした。

そして残りの品はわずかに保つことができたのでした。

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