三十八、「河谷の大龍池」

商弥(シャミ)国はとても寒いので、草木も極めて少なく、穀物も稔(みの)らない所なのでした。
この付近一帯は蕭条(しょうじょう)として人影も見えない所なりでした。

河谷の中に大龍池があり、広さは、東西三百里、南北五十里で、贍部(じゃんぶ)州の中心なのでした。
地勢は険しく遠望すると茫漠(ぼうばく)として果てるところを知らないのでした。
水中動物が数千種も一万種も住んでいて、鳴き声もかしましく、まるで、職人や大工の街のようなのでした。
また、いろいろな鳥がいて、その卵は甕(かめ)のようで、昔、条支の巨卵(きょらん)といったのは、あるいはねまさにこの卵を指して言ったのであろうと思われます。
池の西から一河が流失し、西方ダルマスティティ国の東界でヴァクシュ河と合流し西流して海に注いでいるのでした。

それ以西の諸川もみなともに合流しているのでした。

また池の東からも一大河が流出し、、東方に流れてカシュガルの西界に至り、徒多(シーター)河(ヤルカンド河の源流)と合して、東流し、海に至っているのでした。
それ以東の諸川もともに合流しているのでした。

河谷の南山の外に鉢露羅(パローラ)国(今のバルチスタン)があり、金銀が多くあり、金色に輝いてそれは火のようであったのでした。
またこの大龍池の南北は、仏典の阿耨池(あのくち)に相当します。
この河谷から東方に出て、危険な山道を登り、雪を踏んで行くと五百余里で渇槃陀(カッバンダ)国(今のクシュグルガンに相当)に着くのでした。

このページの先頭へ