四十、「ウサ国 一」

羅漢は端坐して動かず、みると痩せた人のようで、既に七百余年を経ているというのでしたが、凝然として朽ちないのでした。
三蔵法師は、ここに二十余日滞在しました。

ここから東北へいつか進んで行くと、山賊に遭遇したのでした。
商人たちは恐れて山に登ってしまい、インドから連れてきた象は賊に追われ、水に溺(おぼ)れて死んでしまったのでした。
三蔵法師は、賊が去った後に、ようやくまた商人たちと一緒になり当方へと進んで行ったのでした。

寒さをおかし険路(けんろ)を踏んで、八百余里進むと、ようやく葱嶺を出て、烏●「金偏に急の心抜きで右に攵にれんが」(ウサ)国」に至ったのでした。
城の西二百里に大山があり、岩峰は非常に険しく、上にストゥーパがあったのでした。この党には次利用な伝説があるのでした。

数百年前、雷と地震で山が崩れたことがあった。ところが山の中に一人の痩せた比丘が、瞑目(めいもく)して座っていた。
しかも髪の毛は黒々と垂れて、肩を覆っていた。
樵(きこり)がこれを見て王に報告し、やがて王はみずからやってきて礼拝した。
人びとはみな伝え聞いて遠近から集まり、それぞれ供養の述べ花をは山のように捧げられた。

王はかたわらの僧に、

「これはいったい誰だ?」

と尋ねると、僧は次のように答えた。

「これは出家した羅漢で滅尽定(めつじんじょう)に入ったものでございます。歳月が久しくたったので、このように髪が長いのです」(続く)
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

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