七、「クマーラ王のもとへ」

戒賢法師はその手紙を見て、三蔵法師を呼び、次のように仰ったのでした。

「クマーラ王は善心もとより薄く、その国内には仏法もあまり盛んではない。王は貴方(あなた)の名を聞いて、みずから深い発心(ほっしん)をもったようである。貴方(あなた)はあるいは王と宿世(しゅくせ)の善友であるかもしれぬ。どうか行って努力してやってください。出家は人のために利益を与えるのが本分です。貴方(あなた)はいまやまさにその時がきたのです。貴方(あなた)の仕事は、たとえば樹を切るようなものです。もし根を切ってしまえば、枝葉も自然に枯れてしまうでしょう。貴方(あなた)があの国へ行って王を発心(ほっしん)させれば、すなわち国民全部が王にならって仏教徒になるでしょう。もし命に服さないで行かないと、あるいはこの書のような魔事が起こるかもしれません。ご苦労だが、まあ行ってみてください」
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

そこで、三蔵法師は戒賢法師に別れを告げて、クマーラ王のもとへと赴いたのでした。
その国へ着くと、王は三蔵法師とあって非常に喜び、群臣を率(ひき)いてで三蔵法師を出迎え、礼拝(らいはい)を讃嘆(さんたん)したのでした。
そして、三蔵法師を連れて王宮へ入り、毎日、音楽、飲食、花香をつなれてもろもろの供養(くよう)を尽くして、斎戒(さいかい)を受けたいと請(こ)うたのでした。

このようにしてひと月が過ぎて行ったのでした。

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