二十二、「「胡人(そどく)との別れ、そして一人旅へ」

このように胡人は数里進むと立ち止まって次のようにいったのでした。
「私は行くことができません。家族も多いし、王法を犯すことはできません」
法師はその意中を知り、到頭、勝手に還(かえ)させることにした。

胡人(そどく)は、
「法師はかならず伊吾(いご)に達しないでしょう。もし捕らえられて、私も巻き添えをくったらどうしましょう」
という。

そこで法師は、
「たとえこの身をを切りさかれて、微塵のようにされても、けっして巻き添えにしたりしない」
と固く誓ってやったので、心配も収まったようだった。
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

そうして、三蔵法師は馬を一頭胡人に与えて、その労をねぎらい胡人と別れたのでした。

それからは一人旅です。
ただ一人、砂漠を歩くことになり、ただ集められた白骨や馬糞などをながめやりながら、三蔵法師は、歩を進めるのでした。
そのうち、しばらくすると、たちまち数百隊の軍隊がたくさんいるのが見えたのでした。
すぐに行くかと思えばすぐに止まり、その出で立ちは毛皮や毛織物を着ていて、各人馬やラクダに乗っていて、旗や矛旗(ほこはた)はめまぐるしくその形を変え、まさにそのさまは千変万化という言葉がぴったりで、遠くから見るとはっきりと見えるのでしたが、近づいてみるとたちまち微かになってしまうのでした。

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