三十一、「伊吾での歓迎」

沙河中での三蔵法師を襲った困難は筆舌に尽くしがたいものであったのですが、それらを詳しく書く事は困難です。
伊吾に着くとすぐに三蔵法師はある寺に止まりました。
その寺には中国僧三人がおり、その中に一人の老僧がいました。
その老僧は帯も結ばず、裸足で飛び出して三蔵法師を出迎え、三蔵法師を抱いては号泣し、哀号し嗚咽が止まらず、
「今日になってふたたび中国の人に会えるとは思わなかった」と言ったのです。
その言葉で三蔵法師は再びもらい泣きをしたのでした。

伊吾とその周辺の胡僧や胡王は、ことごとく三蔵法師の元を訪れ、三蔵法師に参謁したのでした。
伊吾王は三蔵法師を王宮に招き、つぶさに供養をしたのでした。

ときに高昌王、麹文秦(きくぶんたい)の使者が伊吾に滞在していたのです。
彼はこの日、高昌(新疆の吐魯番「トルファン」県、トルファン地方)に帰ろうと考えていたのですが、たまたま三蔵法師に会い、帰国して王に知らせたのでした。

高昌王は即日使者を送り、伊吾王に詔(みことのり)して三蔵法師を高昌に送ることを命じたのでした。
そして馬十数頭を選び貴臣を奔走させて宿舎を整えて出迎えさせたのでした。

使者は伊吾に十日ばかり止まり、王の心中を述べて、三蔵法師には慇懃に来てくれるように拝請したのでした。

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