三十四、「高昌王とのやり取り」

こうして三蔵法師は高昌に十日ほど高昌の王宮に留まりました。
そして十日余り後のある日、三蔵法師は王に辞して天竺に向けて出発しようとしたのです。

するとそれを察した高昌の王は、
「私はすでに統師に法師がこの地に留まるように懇願させましたが、師の意中はいかがですか」
と尋ねた。

そこで法師は、
「ここに留住することは、じつに王のおかげで有難いことです。しかし私はここに来た本心と合いません」
と答えた。

すると王は重ねて、
「私は先生と中国を遊び、隋帝に従って東西二京および燕(えん)・岱(たい)・汾(ふん)・晋(しん)の各地を訪れ、多くの名僧をみましたが、心からお慕いしたい方には会えませんでした。法師の名を伺ってから身も心も歓喜し手の舞い足の踏む所を知りれません。心ひそかに師がここに来られたらここに止まって生涯弟子(わたくし)の供養を受け、高昌国の人はみな師の弟子にしようと考えていました。どうか師よ、ここで仏法を講授してください。僧徒は少ないながら数千人居り、ともに経典をとって師の聴衆(ちょうじゅ)にあてましょう。どうか私の微心を推察され、西遊を断念くださるよう伏してお願いいたします」
と述べた。
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

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