三十五、「窟(いわや)での有様 二」

そして、三蔵法師はますます仏への慕情をましながら、

「もし仏の影がみることができなければ、私はこの地を去らぬ」
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

と、自ら誓ったのでした。

こうして二百余拝することを続けていると、ついに窟(いわや)がすっかりと明るくなり、如来の影は皓皓と岩壁に現われたのでした。
その有様は、まさしく雲霧がはれたといった如くで、忽焉(こつえん)と黄金(こがね)の山を見るかのようだったのです。

その如来像は、和やかそのもので、仏の御姿は光り輝いているのでした。
これを仰ぎ見た三蔵法師の喜びは如何ほどであったであろうか。
仏身(ぶっしん)と袈裟はともに赤黄色で、膝から上は非常にはっきりとその姿が見えたのですが、華座(けざ)以下は少しかすんで見えるのでした。
膝の左右および背後に、もろもろの菩薩と聖僧などの影もみな揃っていたのでした。

三蔵法師はそれを光り輝く仏像を見終わってから内外の六人に命じて火を持ってこさせ、焼香させたのでした。
人びとが灯りを持ってやって来ると、忽然と仏像は消えてしまったのでした。
急いで火を消してさらに拝むと再び仏像は現われたのでした。
六人のうち、五人までは仏像を見ることができたのでしたが、残る一人はとうとう最後まで仏像を見ることができなかったのでした。

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