二十八、「三蔵法師、道に迷う」

三蔵法師は色々な奇怪な悪鬼に会うたびに観音を念じたが、それでも悪鬼は去らなかったのですが、『般若心経』を読経し、声を発すると全てが消えたのでした。
危険に襲われたときにこの境を読経することで救われたのでした。

さて、三蔵法師は百余里ほど進んだのですが、路に迷って野馬泉が見つけられないのです。
水を飲もうと水が入っている皮袋を馬から下ろそうとした時に、三蔵法師はその袋が重くてひっくり返してしまったのでした。
こうした千里も行ける水ほどあった水はなくなったのでした。

そして、道に迷って三蔵法師はぐるぐると同じところを巡るばかりで、行く方向が解からないのでした。
やむなく引き返して第四烽へ戻ろうかとも考え、十里ほどひきかえしたところで、三蔵法師は不図、
「私は先に願を立て、もしインドに到達しなければ、ついに一歩も東へ帰るまいとした。いまどうして引き返しているのか。むしろ西へ向かって死ぬべきである。どうして東方に帰っておめおめと生きられよう」
と思った。
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

そうして再び三蔵法師は手綱をめぐらして、一念に観音を念じて西北へと進むのでした。

この時、辺りを見渡しても茫然としているのみで人も鳥も見えませんでした。

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