四十一、「ウサ国 二」

(承前)「何とか驚かして起こすことはできないか」

「断食の身体は、定(じょう)を破るとたちまち壊(こわ)れてしまいます。まずヨーグルトをよく注ぎ、皮膚(ひふ)をを潤(うるお)し、それから●「き篇に健の旁」槌(けんつい)を打てば感じてわれわれの意を悟(さと)り、あるいは起(た)つかもしれません」

「そうだ、それが善い」

王は僧の語(ことば)に従って、羅漢にヨーグルトを注ぎ、槌を撃(う)った。すると果たして羅漢はふと目をあきけてこちらを見た。

「汝(なんじ)らは誰か、その法衣を着た者は?」

「私は僧侶です」

「私の師カーシャパ(迦葉波)如来はいま何処(どこ)においでになるのか」

「カーシャパ如来はずっとむかしに涅槃(ねはん)にに入られました」

羅漢はこれを聞いて?然(しゅうぜん)としたが、重ねたてつぎのように尋ねた。

「シャキャムニ(釈迦文)仏はまだ無上等覚(むじょうとうがく)を成し給わぬか」

「シャキャムニ仏は既に無上等覚を成(じょう)とられ周(あま)ねく万物を利せられ、すでになくなられました」

これを聞くとかの羅漢はしばらく目を伏していたが、やがて手で髪をあげ、つと起(た)つとみねまに虚空(こくう)に舞い上がり、大神変を起こした。
すなわち火を燃えあがらせて身体を焼き、やがてその遺体は地に落ちた。
王は大衆とともにその骨を集め、そこに建てたのがこのストゥーパであるという。
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

ここから北行すること五百余里で、●「人偏に去」紗(カシュガル)国(もとの疏勒という。即ちその城の称号である)に至ったのでした。

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