十七、「達磨(だるま)の夢」

李昌と別れてからというもの、三蔵法師はますます心配が増えてしまったのでした。
三蔵法師に従っていた二人の小僧のうち、道整(どうせい)はさきに敦煌(とんこう)に向かい、一人恵琳(えりん)だけがいたのですが、三蔵法師は彼が西域への遠い旅には到底堪えられないことを知り、恵琳を涼州に帰らせたのでした。

三蔵法師は遂に貿易(とりひき)をして馬一頭を買いましたが、この馬を引く馬子がいないので困っていました。
そこで三蔵法師が滞在している寺の弥勒像(みろくぞう)のまえで、次のように祈ったのでした。

「どうか馬子を一人見つけることができ、玉門関を渡ることができますように」
と祈った。
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

その夜にその寺の胡僧(こそう)の達磨は、三蔵法師が一つの蓮華の花に座って西方に向かう夢を見たのでした。
達磨はこの夢を不思議に思い、早朝に三蔵法師の元にやってきて三蔵法師にそのことを話したのでした。
三蔵法師は心中ひそかに出発できる前兆だと喜びましたが、達磨には、
「夢は虚妄にすぎません。そんな夢物語など気にかけるには及びません」
と答えた。
そして再び道場に入り、弥勒像に礼請(らいしょう)していると、急に胡人(そどく)がやってきて、仏を礼拝したのでした。
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

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