五、「クマーラ王の手紙」

その様に三蔵法師は答え、戒賢法師も大いに喜び、

「それは正しく菩薩の心である。私も心よりそなたに望むところであり、そなたも同じことが分った。自由に旅の準備をしてよろしい。他の人びともむやみに引き留(と)めてはなりません」
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

といったのでした。
このようにしては話が終わったので、三蔵法師も自ら僧房に帰ったのでした。

それから二日後、東インドのクマーラ王は使いを、戒賢法師のもとに送り、

「弟子(わたくし)は支那国の大徳をみたいと思います。どうか師よ、彼をこちらによこして、私の願いを満たしてください」
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

という手紙をよこしたのでした。

戒賢法師はこの手紙を見ると人びとに告げて、

「クマーラ王は玄奘を招聘(しょうへい)しようとしている。しかし、この人は戒日王の所へ行って、小乗の人びとと対論するように予定されている。いまもしクマーラ王の所ほへ行き、もしハルシャヴァルダナ王からも手紙が来たらどうしようもない。クマーラ王の所へはやってはなるまい」
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

といって、戒賢法師はクマーラ王の使いに向かって、

「この支那僧はいま本国に帰りたいといっています。それゆえ、王の命に従うわけには参りません」
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

と戒賢法師は答えたのでした。

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