十九、「仏牙」

王はそう唱えさせたのであった。
大衆は歓呼して三蔵法師を賞(ほ)めそやしたのでした。
大乗の人びとは三蔵法師をマハーヤーナデーヴァ(摩訶耶那提婆、大乗天の意)といい、小乗の人びとはモークシャデーヴァ(木叉提婆)といったが、これは解脱天(げだつてん)の意でした。
そして、焼香散華(さんげ)し敬礼して去っていったのでした。
この後、三蔵法師の名声はますます高まったのでした。

王の行宮(あんぐう)の西には、一つの伽藍があったのでした。
ここは王が供養する所で、中には仏牙があり、長さは一寸五分ばかりであったのでした。
その色は、黄白色でいつも光明を放っていたのでした。
むかし、カシュミーラ国のカルコータ種(訖利多、買得の意)が仏法を滅ぼして、僧侶を解散させたことがあったのでした。
その中の一僧が遠くインドに遊んだのでした。
その後、トカラ国の雪山下王(せつざんかおう)(●「口篇に四」摩羅●「口篇に旦」)は、もろもろの賎種(せんしゅ)が仏法を滅ぼすのを怒り、商人に変装して、三千の勇士を率(ひき)いて、多くの珍宝をもって偽(いつわ)って奉献しようとしたのであった。

カルコータの王はもとより貪欲(どんよく)であったので、この話を聞いて大喜びをし、使いを送ってお迎えしたのでした。

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