十四、「言い伝え」

ステゥーパのそばには伽藍があって、沙弥(しゃみ)が管理をしていたのでした。
この地に伝えられていることによれば、昔、比丘(びく(具足戒を受けた修行僧))が同業の者を招いたところ、遠くこの地にやって来て、この塔を礼拝(らいはい)した所、たまたま野象が花を摘んできて塔前に供え、また、牙で草を刈り鼻で水を注ぐのを見て、感嘆しないものはいなかったのでした。
その中の一比丘は大戒を捨てて、ここに留まって供養したいと願い、衆人に向かって、

「象は畜生(ちくしょう)であるのに、なお塔を敬(うやま)うことを知って花を供え清掃(せいそう)している。私は人間で、しかも仏によって出家の身である。どうしてこんなに荒れはてた塔をみて奉仕しないではいられないでしょう」
〈『玄奘三蔵』(講談社)からの引用〉

と言って、人びとと別れてここに留まり、小屋を作って、地を耕し、花や果樹を植えて寒暑を全くものともせずに、膿まずたゆまず働いていたのでした。
このことを伝え聞いた近隣の国々は、各国、財宝を投じて、ともに伽藍を建て、それから僧務を司(つかさど)らせたのでした。
その後は、代々それが受け継がれて、現在に至り、遂に故事になったのだということでした。

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